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リブパネル工法とパルコン、そして在来RC工法 ― 在来が持つ本質的な優位性とは

リブパネル工法とパルコン、そして在来RC工法 ― 在来が持つ本質的な優位性とは

はじめに、R–LABELは現場で鉄筋を組み、コンクリートを打設する「在来RC造」の住宅です。本物のRC住宅を建築しています。

災害大国日本にお住まいの皆様が安心して過ごせる住宅を提供したい考えで、モデルハウスを建築してまでRC住宅の良さを伝えています。

在来RC住宅・・・例えば、最近では木造を採り入れる建築物も増えましたが、公共施設は在来RCが主流です。皇居も首相官邸も在来RC(正確には大型建築なので鉄骨を建てて鉄筋コンクリートで覆うイメージのSRC)です。RCを採用する理由はいくつかありますが、防災、テロ対策を考えれば、RC以外の選択肢はないからです。もし、何かしらの飛来物が屋根に落ちた場合、木造では簡単に貫通します。一般の住宅でも、誤って自動車が突っ込んで来たら木造の壁を突き抜けてしまいます。コンクリートの強度は比較にならないほど強いことを是非知っていただきたいと思います。

さて、ここから本題です。現場で造り上げる「在来RC」、工場でせいぞうする「PC/プレキャストコンクリート」の特徴について説明します。あまり知られていない「PC」には、2種類あることも、ここでは説明します。参考にしてください。

改めて、鉄筋コンクリート住宅は、日本の住宅市場において「最も堅牢で安心できる住まい」として一定の評価を得てきました。木造住宅や鉄骨造と比べても、耐震性・耐久性・耐火性の面で優れており、とりわけ地震や台風、火災といった自然災害にさらされる日本の環境においては、RC住宅の存在感は揺るぎないものがあります。

しかし一口に「RC住宅」といっても、その工法には大きな違いがあります。
大きく分ければ、以下の三つの方式が存在します。

  1. リブ付きWPCパネル工法(百年住宅、レスコハウスなど)
  2. 均一厚PCパネル工法(大成パルコンなど)
  3. 在来RC工法(現場打ちコンクリートによる壁式またはラーメン構造)

この3つは同じ「鉄筋コンクリート造」でありながら、構造設計の思想や実際の住まい心地に大きな差を生みます。今回は「価格が安い」と言われる「リブ付きパネルの問題点」を掘り下げます。実は、お客様から説明を求められることが多いのです。全く違う構造なのです。

リブ付きWPCパネル工法の実態

リブパネルとは、コンクリートパネルの裏側に「梁のような突起(リブ)」を設けることで、強度を保ちながらコンクリート使用量を減らす工夫をしたものです。百年住宅やレスコハウスが採用しているのがこの方式です。

表面だけ見れば「分厚いコンクリートの家」のように見えますが、実際にはパネルの大部分は薄く、必要箇所だけにリブを設けて強度を補っています。つまり、壁が一様に強いわけではなく、リブ部分に強度が偏っている構造なのです。

メーカーが謳うリブ工法のメリット

メーカー側は以下の点をメリットと説明しています。

  • コンクリート量を無駄なく削減 → だから建物の軽量化、だからコストダウン
  • 工場製造による品質の安定化
  • リブによる剛性確保で「十分な強度がある」とアピール

確かに合理的に見えます。しかし、その裏側には見過ごせないデメリットが潜んでいます。

リブパネル工法のデメリットとは

まず、そもそも軽量化という考え方が、我々RC専門企業からすれば、あり得ないのです。「RCは重たくなければ意味がない。」重たいから、揺れない、静か、流されない、倒れない、のです。比較対象にはなりませんが、軽い戦車と重たい戦車、乗るなら重たい戦車でしょう。軽さを求めるなら、耐震性の高い木造住宅の方が良いと言えます。

リブパネル工法のイメージ図
※ 参考イメージ
  1. 局所的な強度依存
    リブ部分は厚く、鉄筋量も集中していますが、リブとリブの間の薄い部分はどうしても脆弱です。地震や台風など外力が不均等にかかった場合、その「薄い部分」が弱点となり、ひび割れや損傷のリスクが増大します。
  2. 熱橋(ヒートブリッジ)の発生
    リブ部分は厚く、その他が薄いため、断熱材を施工しても部分的に熱が逃げやすい経路が生まれます。つまり、夏は熱気が侵入し、冬は冷気が伝わりやすい。結果的に断熱性能にムラが出やすく、冷暖房効率の低下につながります。
  3. 遮音性の不均一
    コンクリートの厚みは遮音性と密接に関わります。均一厚であれば壁全体が同じレベルで音を遮りますが、リブ工法では「厚い部分は静か、薄い部分は音が通りやすい」というムラのある遮音性となり、実際の生活空間では快適さが損なわれます。
  4. 経年劣化リスク
    薄い部分はひび割れが発生しやすく、長期的な耐久性に疑問が残ります。メーカーは「百年住宅」というブランド名で耐久性を強調しますが、実際には定期的なメンテナンスなしに百年持つ保証はありません。特にリブ間の薄肉部分は水分浸入や中性化のリスクが高く、鉄筋腐食の起点となる可能性があります。
  5. 心理的安心感の欠如
    消費者が「分厚いコンクリートの壁=堅牢」というイメージを持って購入しても、実際にパネル裏側が「ペラペラの部分」と「リブの厚い部分」の組み合わせであることを知れば、心理的安心感が大きく損なわれるのは避けられません。

パルコン(均一厚PCパネル)の特徴

大成建設グループが展開する「大成パルコン」は、在来RCに近い思想でつくられています。壁厚は外壁で150〜180mm程度を確保し、パネル全体が均一厚です。そのため以下の特徴があります。

  • 力の分散が一様:壁全体が同じ厚みであるため、地震力や風圧力を均等に受け止めることができる。
  • 断熱施工が容易:均一厚のため、外断熱・内断熱をムラなく貼れる。熱橋のリスクも低い。
  • 遮音性が安定:全体が同じ厚みなので、音の伝わり方にムラがない。
  • 在来RCに近い安心感:消費者にとって「分厚い壁が一様に建物を守っている」という視覚的・心理的安心感がある。

軽いリブPCと比較すると、大成建設ハウジングのPCは優れていると断言できます。ただし、パルコンは重たく大きなPC板を工場から現場に運び、大型クレーンで1枚1枚吊り上げて、繋ぎ合わせるため、前面道路が狭いと工事できません。場合によっては、近隣住宅の許可を得て、裏側の大通りから近隣住宅の上を跨いでコンクリートパネルを搬入することもあります。これがしばしば問題となり、荷揚げ当日に近隣トラブルになることもあります。他にも、異形地や日影規制の関係で斜めの壁や屋根が製作できなかったり、美術館のような美しい住宅建築に必要な凹凸やR加工への対応が困難です。

在来RC工法の本質的な強み

現場打ちコンクリートによる在来RC工法は、設計自由度・性能・安心感のすべてにおいて優位に立ちます。

  1. 壁厚の自由設計
    設計者が必要に応じて外壁200mm、耐力壁250mmなど、構造的・断熱的に最適な厚みを設定できます。リブのように「部分的に薄い」ことはなく、建物全体を均一な厚みで守ります。
  2. 一体打ちの剛性
    在来RCは現場で鉄筋を組み、型枠を組み立て、コンクリートを一体で打設します。そのため継ぎ目やジョイントがない一枚岩のような構造となり、地震時の力の分散が極めて優れています。
在来RC・杉板本実模様の外壁例
ちなみに、このような美しい木目柄の外壁を作ることも可能です。
在来RCの外観事例
※ R–LABELの施工イメージ
  1. 断熱の柔軟性
    外断熱・内断熱・充填断熱など自由に選択可能。均一厚の壁全体に施工できるため、熱橋を抑えやすいのです。高水準の断熱基準にも柔軟に対応できます。
  2. 耐久性と資産価値
    現場打ちRCは構造的に最も堅牢で、適切な設計と施工管理をすれば60年〜100年単位の耐久性が期待できます。その堅牢性は不動産市場においても評価され、資産価値を維持しやすいのが大きな強みです。
  3. 設計自由度
    PCパネルでは制約のある大開口・曲面壁・跳ね出し構造も、在来RCなら設計次第で実現可能。建築家とのコラボレーションによる自由度の高い空間づくりに適しています。

在来RCが最も優れている理由

リブ付きWPCパネルは「効率化」「コストダウン」を旗印にしていますが、その代償として 局所的な強度依存・断熱ムラ・遮音性の不均一・心理的安心感の低下 といったデメリットを抱えています。

パルコン(均一厚PCパネル)は、リブ工法よりは堅実ですが、それでもプレキャストゆえの制約が残ります。

一方で、在来RC工法は全体が均一厚の一体打ち構造であり、耐震・断熱・遮音・耐久・資産価値のすべてにおいて最も優れています。コストや工期の面ではパネル工法に劣る部分もありますが、住宅という「命と資産を守る器」を選ぶ観点から見れば、在来RCこそが究極の選択肢であることは揺るぎません。

PCでは難しいRCデザイン

PCでは難しい在来RCのデザイン例
PCでは難しい意匠も、在来RCなら柔軟に対応可能。

住宅は「百年先まで家族を守るもの」であるべきです。効率化の名の下にリブで薄肉化されたパネルを用いるよりも、在来RCという王道の工法を選ぶことで、安心・快適・資産性のすべてを同時に手にすることができます。

リブ付きパネルの合理性は否定しません。しかし「合理性」と「安心感」は必ずしも一致しません。命を預ける住まいに求めるべきは、数字上の合理化ではなく、揺るぎない堅牢性と普遍的な安心感なのです。

「本当の100年住宅は在来RCである。」と言えるのではないでしょうか。