―― RC住宅から見えた、住まいと時代の転換点
2025年という転換点
――RC住宅ブランド「R-LABEL」から見えた、住まいと時代の変化
2025年を振り返る――“平時”の終わり
2025年を振り返ると、世界も日本も、静かに、しかし確実に「次の時代」に足を踏み入れた一年だったと感じます。
世界情勢に目を向ければ、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の不安定化、米中対立の構造化など、「平時」と呼べる状態がどこにも存在しない一年でした。サプライチェーンは完全には戻らず、エネルギー・食料・安全保障という言葉が、専門家だけでなく一般の生活者の会話にまで入り込んできました。
国内においても、円安の常態化、物価上昇、実質賃金の伸び悩み、そして金利のある世界への回帰。これまで“当たり前”だと思っていた前提条件が、一つひとつ書き換えられていった年でもあります。
相談が増えた本当の理由――地下室・シェルターという現実
そんな2025年、R-LABELには、これまで以上にRC住宅を建てたいというお客様からの相談が増えました。
それは単なるデザイン志向やステータス志向ではなく、もっと本質的な理由からです。
今年、特に強く感じたのは、
「地下室が欲しい」
「シェルターになる空間をつくりたい」
という声が、明らかに増えたことでした。
災害対策、防災備蓄、プライバシーの確保、そして“有事”という言葉を現実のものとして捉え始めた人たちの意識の変化。
住宅は、ただ快適に暮らす箱ではなく、命と資産を守る拠点である――そんな考え方が、確実に広がっているのを感じます。
“建てたい”のに建てられない――RC住宅の供給制約
2025年、R-LABELは、お問い合わせいただいたすべてのクライアントの住宅建築を請け負うことができず、一部は2026年までお待ちいただいています。
RCの戸建住宅建築は、請け負える企業が少ないことで知られています。技術的に請け負えるのは、
大手ゼネコン、中堅ゼネコンの一部、地場ゼネコンの一部です。R-LABELは、地場ゼネコンの一部に位置付けられます。
いま、なぜ「RC住宅が建ちにくい」のか
大手ゼネコンは、高層ビルやプロジェクト案件でいっぱい。中堅ゼネコンは、より生産性の高い大型マンションでいっぱい。
地場ゼネコンも5億円を超える手離れの良いマンション事業を優先。
結果として、R-LABELのようにRC住宅を真正面にとらえる企業が、請け負いきれない状況となっているのです。
地場工務店は、木造住宅は建築できても高難度なRC建築は苦手としています。
また、ハウスメーカーもRC工法ではなく、PC工法(プレキャストコンクリート)を採用して、生産性を高めています。
PCとは、工場でコンクリートパネルを増産して、現場で組み立てる工法です。
参考ですが、大成パルコンのPCは壁圧も相当なもので安心ですが、安価で販売しているコンクリート住宅は、壁圧の薄いリブ型PCです。コンクリートの量を減らして軽くすることで価格を下げています。イメージは板チョコです。厚い部分と薄い部分がありますが、板チョコは厚い部分が多いのに対して、リブPCは逆です。板チョコの形状の逆で、薄い部分がほとんどなのです。安価でもコンクリート住宅であれば良いとすれば、リブPCがかなり安いです。
当社が建築するRC住宅は現場で打設する本格的なRC工法で、主には壁式RC工法です。
壁式は分譲マンションで採用されるラーメン構造のような柱や梁に出てくる凹凸がないスッキリしたデザインとなります。
もちろん、大きなスパンを飛ばす時は、ラーメン構造を採用します。
2025年に増えた「RC住宅」「地下室」「シェルター」という要望は、
住まいへの価値観が変わったという事実だけでなく、RCを選ぶ人が増えているのに供給が追いつかないという、
もう一つの現実を浮き彫りにしました。R-LABELは高度な技術を持つ施工管理を育てています。
海外からの視線――台湾の方の問い合わせが示した価値観
その傾向は、日本国内のお客様だけに限りませんでした。2025年は、台湾の方からの問い合わせも複数ありました。
東京にセカンドハウスを持ちたい方。東京にオフィス兼住宅を構えたい方。
共通していたのは、・災害に強いこと・構造がコンクリートであること・防犯性が高いこと・地下空間があることへの安心感といった価値観です。
「何が起きても、地下室があれば安心できる」そう語る方も、決して少なくありませんでした。
そしてこれは、台湾の方に限った話ではありません。同じような価値観を、日本人のお客様からも多く耳にした一年でした。
私たちは、時代が静かに、しかし確実に変化していることを、現場で肌感覚として受け止めています。
マンションか戸建か――都心価格の“異常値”と転換
2025年は、マンションか戸建住宅かで悩む方からの相談も、明らかに増えました。理由ははっきりしています。
都心のマンション価格――新築も中古も、明らかに“異常値”に達しているからです。
もはやマンションは「住まい」というより、投資商品として扱われる存在になってしまいました。
かつては「戸建は高いから、マンションで我慢する」という選択だったものが、
「売りやすく、値上がりするからマンションを買う」へと変わり、特にタワーマンションに人気が集中しました。
しかし2025年後半、湾岸エリアを中心に、売れていないタワーマンションの在庫が目立ち始めました。
価格は依然として強気のまま。だからこそ、売れない。実際、水面下では下がり始めている物件もありますが、それでも実勢価格はまだ割高だと感じます。
こうした状況を受け、「それなら、適正な価格を保ちやすい土地と戸建住宅にしよう」と考えを切り替える人が増えてきました。
少なくとも、都心に土地を持つという選択は、長期的に見て大きな下落リスクが少ない。異常なのはマンション価格であって、土地そのものではない。私たちはそう考えています。
2025年、こんな出来事もありました。とある中古マンション。相場は1億円ほど。
しかし、どうしても欲しい人が現れ、2億円で取引されてしまったのです。
不動産業に携わる者なら誰でも知っていますが、不動産の価格は「売り出し価格」ではなく、
「実際に取引された価格」が基準になります。
つまり、その瞬間、そのマンションは「2億円で売れるマンション」になってしまった。
すると、周辺のマンションもそれに引きずられる。こうした現象が、都心のあちこちで起きました。
実需とは到底釣り合わない価格であっても、買う人がいる以上、誰も止められない。
転売目的の購入も、あまりに増えました。最初は投資家や不動産業者だけだったものが、一般のサラリーマンにまで広がり、
「マンションは儲かる」という神話が生まれたのです。
5年前の2倍になったマンションも、もはや珍しくありません。急激すぎる価格上昇に、行政もようやく動き出しましたが、
正直なところ、手遅れに近いと感じています。
マンションバブルが崩壊しなければいい、という声も聞きますが、筆者としては、急落ではなく、じわじわと調整が進むのではないかと見ています。
いずれにせよ、長く保有する住まいとして考えたとき、戸建住宅の価値は揺らぎません。
若い頃はタワーマンションに憧れるものです。しかし、子どもが生まれ、家族が増え、ライフステージが変わると、庭のある戸建住宅が欲しくなる。
これは昔から変わらないセオリーです。
実際に、タワーマンションを売却し、戸建住宅を建てるクライアントは年々増えています。
RC住宅が少ない国で、RCが選ばれる理由
R-LABELは、RC住宅専門ブランドです。国の統計を見ても、日本の戸建住宅の大半は木造で、RC住宅はわずか1%程度に過ぎません。
価格が高いという理由もありますが、それ以上に、日本人は「住宅は木造」という思い込みを持っているのかもしれません。
構造よりも、間取りやデザインが重視されてきた結果です。
しかし、松濤、青葉台、中目黒といった高級住宅街を歩くと、すぐに気づきます。RC住宅が多いという事実に。
RCには、圧倒的な安心感があります。火災、地震、飛来物、洪水、台風、防犯、そして時間の経過。
数えきれないリスクに対して、コンクリートという素材は、静かに、しかし確実に応えてくれます。
富裕層は、それを感覚ではなく、知識として理解しているのです。
金利の上昇、それでも揺らがない層
2025年、金利は確かに上がりました。しかし、RC住宅を購入・建築する層が減った印象は、ほとんどありません。
もともと余裕のある方が選択する住宅であり、数が限られているからこそ、市況の変化が表に出にくいのかもしれません。
2026年へ――「安全」「資産」「実体」への回帰
そして、2026年。おそらく、「安全」「資産」「実体」への回帰が、さらに加速する年になるでしょう。
派手な値上がり神話ではなく、本当に価値のあるものだけが残る時代です。
2026年も、R-LABELは、RC住宅という確かな選択肢を提示するブランドとして、時代の変化を冷静に見つめながら、住まいの本質を問い続けていきます。
一年の終わりに、そんな決意を新たにしながら。